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The Graphの仕組み: インデクサー・キュレーター・デリゲーターの役割

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The Graphとは、ブロックチェーン上の膨大なデータを整理・検索可能にする、分散型のインデクシングプロトコルです。

この記事では、7部にわたるThe Graphの紹介記事の第2回として、The Graphネットワークを支える3つの役割である「インデクサー」「キュレーター」「デリゲーター」の役割や動機についてご紹介するとともに、その根底となる「The Graph Token(GRT)」のエコシステムについてもあわせてご紹介します。

第1回の振り返り:なぜThe Graphが必要なのか

本編に入る前に、第1回「The Graphとは? Web3のGoogleと呼ばれるインデクシング技術について解説」の内容を簡単におさらいしましょう。

  • 課題: ブロックチェーンは「目次のない巨大な図書館」であり、特定のデータを抽出するには膨大な時間とコストがかかる。
  • 解決策: The Graphはオンチェーンデータに「目次」(サブグラフ)を与え、GraphQLを通じて瞬時に情報を引き出せるようにする。
  • 進化: 単なる検索ツールから、AIや伝統的金融(TradFi)をも支える「分散型の知識グラフ」へと進化を遂げている。

第1回では、「何を」「どのように」行っているか解説しました。第2回となる本記事では、「誰が」その信頼性を担保しているのかを紐解いていきます。

The Graph Token (GRT)の役割

「インデクサー」「キュレーター」「デリゲーター」の役割と目的を説明する前に、前提知識としてThe Graphネットワークのエコシステムを支えるトークンである$GRTの説明を行います。

The Graph Token (以下、GRT) は、一般に「ワークトークン」と呼ばれるモデルを採用しています。これは、ネットワーク内で「仕事(データのインデックスやクエリ処理)」をする権利を得るために、まずそのトークンを所有・質入れ(ステーキング)しなければならない仕組みです。

ワークトークンの仕組みはDePIN関連のプロジェクトでは極めて一般的であり、例えばChainLink ($LINK)やLivepeer ($LPT)等においても採用されています。

Q. なぜDePINプロジェクトではワークトークン制度が採用されるのか?

A1. 信用を「資産」で担保するため

分散型ネットワークにおいて、最大の敵は「嘘つき」や「怠け者」です。ワークトークンは、仕事をする前にトークンを預けさせることで、「もし不正をしたら自分の資産が没収される」という状況を作り出し、不正の経済的インセンティブを抑制しています。この仕組みはナシム・ニコラス・タレーブの著書になぞらえてスキン・イン・ザ・ゲームとも呼ばれます。

The Graphにおいてもスラッシングの仕組みが存在しています。2025年12月のGraph Horizonにより、スラッシングの仕組みが更新され、固定の2.5%からデータサービスや影響度によって機動的に調整可能となりました1

A2. 悪意のある攻撃のコストを上げるため

もし、誰でも無制限にノードを立てて仕事ができるとすると、一人の攻撃者が何万もの偽ノードを作成し、ネットワークを占拠することが出来るようになってしまいます。これをシビル攻撃と呼びます。

そこで、ワークトークンを質入れしなければ仕事ができないルールにすることで、「ネットワークを支配したければ、膨大なトークンを市場で購入しなければならない」という物理的な障壁を作ります。攻撃コストが攻撃による利益を上回るように設計されているのです。

The Graphにおいては、インデクサーは最小自己ステーク量10万GRT(約47万円. USDJPY=154.73, GRTUSD=0.03056.)を預け入れる必要があります。2

The Graph ネットワークは分散型組織ですから、中央集権的に参加者の行動を統制する管理者は不在です。そのため、GRT というトークンによる報酬が参加者の唯一かつ最大の動機として作用するのです。すなわち、以下の2つです。

  • 報酬(Rewarding): 正確なデータを提供した者には、プロトコルから新規発行される GRT と、ユーザーが支払うクエリ手数料が分配されます。
  • ペナルティ(Slashing): もし嘘のデータを提供したり、不誠実な行いをした場合は、預けているGRTの一部が没収されます。

この「得をしたい」という欲求と「損をしたくない」という恐怖を GRT が一手に引き受けることで、ネットワークの誠実性が保たれています。

では、このトークンを動かす役割を持つ人は誰でしょうか?それこそが、「インデクサー」「キュレーター」「デリゲーター」です!

インデクサーとは:データ集計者およびデータベース運営者

インデクサーはThe Graphエコシステムにおいて最も重要な役割を持ち、技術力も求められるデータ集計&データベース運営者です。

インデクサーの1つ目の役割は、24時間365日、EthereumやArbitrumなどのブロックチェーンを監視し続け、中身を読み取って検索しやすい形に並べ替える、すなわちインデックスを作成することです。

そして2つ目の役割として、アプリケーションからデータを要求するクエリが飛んできた際、それを送り返すデータベースサーバーの役割も果たしています。

もちろん、インデクサーはボランティアではありません。以下の2つの収益を目的として動く「営利事業者」です。

  1. インデクシング報酬(Indexing Rewards): サブグラフをインデックスすること自体に対して、プロトコルから新規発行されるGRTが支払われます。
  2. クエリ手数料(Query Fees): ユーザーがデータを閲覧した際に支払う手数料。これはデータの需要に直結します。

画像引用元: State of The Graph Q3 2025

2026年1月31日現在、The Graphネットワークには87のインデクサーが存在します3

Messariのレポートによれば、2024年Q2には140を超えるインデクサーが活動していましたが、インデクサー間の競争の激化、The Graphトークン価格の低迷、Graph Horizonアップデートへの対応などといった要因によって非効率なインデクサーが淘汰され、その数は2025年Q3には99社まで減少し、現在も減少傾向が続いています。(ただし、処理されるクエリボリュームは増加の一途を辿っており、勝者総取りの様相を呈しています)

どんなインデクサーがいる?

インデクサーの実例を何社か見てみましょう。特に実績のある大手としては次のようなところが挙げられます。

  • ellipfra-indexer.eth : 1億GRT以上のデリゲーションを受け入れている、最大手のインデクサーです。カナダ・ケベックに本拠地を置いており、運営者のMarc-André Dumas氏はステーブルコインである$DAIの発行管理を司るMakerDAOでチームリードを務めていた技術者です。インデクサーデザイン等におけるThe Graph初期からのコントリビューターでもあります。
  • pinax.eth : こちらも4,400万GRT以上のデリゲーションを受け入れている、最大手級のインデクサーです。カナダ・オタワに本拠地を置いており、CIOのMatthew Darwin氏はHP EnterpriseでのR&Dセクションマネジャーなどの経歴を有します。こちらも、The Graph初期からのコントリビューターであり、Token APIの開発元4でもあります。

キュレーターとは:有用なデータに対する目利き師

ブロックチェーン上には無数のサブグラフが存在しますが、そのすべてが有益なわけではありません。誰も使わないデータをインデックスすることは、サーバーリソースと電力の浪費に繋がります。そこで、「どのサブグラフに価値があり、インデクサーが処理すべきか」を指示するのがキュレーターの役割です。

キュレーターは、新しく公開されたサブグラフのデータ定義やコードを分析し、それが正確か、またそのデータを利用するアプリケーションにどれほどの需要があるかを評価します。

評価の結果、価値があると判断したサブグラフに対してGRTを「シグナリング(預け入れ)」します。これにより、インデクサーに対して「このデータは需要があるから、インデックスを急ぐべきだ」という強力な経済的メッセージを送るのです。

言うまでもありませんが、キュレーターもまた営利目的です。その動機は、自らが目利きしたサブグラフが将来生み出す「クエリ手数料の分け前」です。

  • 報酬: シグナルを送ったサブグラフが多くのアプリに利用されると、そこで発生したクエリ手数料の一部がキュレーターに分配されます。
  • リスク(ボンディングカーブ): キュレーションにはボンディングカーブという数学的モデルが採用されています5。早期に価値を見抜いてシグナルを送った人ほど有利となり、逆に需要のないサブグラフにシグナルを送ってしまうと、引き出す際に預けた額を下回るリスクもあります。

デリゲーターとは:インフラの安全性を担保する地主

デリゲーターは、インデクサーのように自ら高度なサーバーを運用したり、キュレーターのように複雑なコードを分析したりすることなく、保有しているGRTをインデクサーに委任することでネットワークに貢献する役割です。

デリゲーターが特定のインデクサーにGRTを預けることで、そのインデクサーの「合計ステーク量」が増加します。 The Graphのプロトコルルールでは、インデクサーは「自分のステーク額の最大16倍」までしか仕事を受け取ることができません。デリゲーターが資本を投下することで、インデクサーはより大きな仕事を請け負えるようになり、結果としてネットワーク全体の処理能力と安全性が向上します。

デリゲーターの動機は、インデクサーが稼ぎ出した報酬の「お裾分け」です。

  • 報酬: インデクサーが獲得した「インデクシング報酬」と「クエリ手数料」のうち、あらかじめ設定された割合(分配率)に応じてGRTを受け取ることができます。一度委任してしまえば、あとはプロトコルが自動的に報酬を計算・配布してくれるため、技術的な運用コストはゼロです。
  • リスク:デリゲーターはこれまでスラッシングリスクを負いませんでしたが、2025年12月のGraph Horizon以降、預け入れ先のインデクサーが不正を行った場合、同様にスラッシングのリスクを負うこととなりました6。ただし影響は局所的であり、インデクサーがスラッシング可能な預け入れGRTを保有していない場合に限り、デリゲーターがスラッシングの対象となります。また、デリゲーションの解除には現時点で28日の待機期間があり、この間はGRTを動かすことも、デリゲーション報酬を手に入れることもできません。

すなわちデリゲーターとは、ワークトークンの制御下におけるレバレッジのような役割を担っていると言えるでしょう。

どのくらいの報酬が手に入るの?

The Graphのデリゲーション報酬は2026年1月現在、おおむねAPR12%~26%前後で推移しています。(インデクサーのアロケーション状況等によって常に変動します。)

以下に代表的なインデクサーの想定APRを掲示します。

報酬の源泉は?

極めて重要な事実として、The Graphのデリゲーション報酬はインデックス報酬とクエリ報酬の2つを源泉としていることに注意する必要があります。

クエリ報酬は、インデクサーが受け入れたクエリに対してサービス利用者が支払うGRTから払い出されます。

一方で、インデックス報酬は、インデックスを行ったことそれ自体に対して、The GraphのネットワークがGRTを新規発行することによって払い出されます。

The Graphは年間3%の目標インフレ率が設定されており、トークン発行量は無制限のため、希薄化が生じます。

このことによるデメリットは、第七回「The Graphの懸念点: 発展途上のトークンエコノミクスと希薄化」にて詳述します。

デリゲーションによってトークンエコノミクスに貢献する方法については、第八回(最終回)「The Graphへの投資: デリゲーションによる分散型インフラ投資の妙味」にてご紹介します。

第二回のまとめ

インデクサー、キュレーター、そしてデリゲーターの三者が GRT という共通の通貨を通じて結びつくことで、Web3を根底から支えるデータインフラが自律的に駆動しています。

特にデリゲーターとしての参加は、単なる利回り目的のステーキングではありません。あなたが信頼に足ると判断した技術者に資本を託し、間接的にWeb3の透明性を担保する、いわば「地主」として、The Graphネットワークの安全性の強力な裏付けとしての役割を発揮するのです。

次回予告

このように定義されたThe Graphは、本記事でも何度か触れた「Graph Horizon」という大規模なアップデートにより、完全なる分散化、そしてより広範なデータサービスへの対応など、その姿をさらに変えようとしています。

次回、第3回では、この進化の核心である「The Graph Horizonが描く『完全なる分散化』への軌道」について詳しく見ていきましょう。

  1. Introducing Graph Horizon – A data services protocol | graphprotocol / graph-improvement-proposals https://github.com/graphprotocol/graph-improvement-proposals/blob/main/gips/0066-graph-horizon.md ↩︎
  2. Tokenomics of The Graph Network https://thegraph.com/docs/en/resources/tokenomics/ ↩︎
  3. Indexer Score Dashboard https://indexerscore.com/ ↩︎
  4. pinax-network / token-api https://github.com/pinax-network/token-api/ および
    Pinax November 2025 Update https://forum.thegraph.com/t/pinax-november-2025-update/6781 ↩︎
  5. An Introduction to Bonding Curves. – The Graph Academy https://thegraph.academy/curators/introduction-to-bonding-curves/ ↩︎
  6. Introducing Graph Horizon – A data services protocol | graphprotocol / graph-improvement-proposals https://github.com/graphprotocol/graph-improvement-proposals/blob/main/gips/0066-graph-horizon.md ↩︎



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